JSTQB認定テスト技術者資格とは?
ソフトウェアの品質保証に携わるQAエンジニアのスキルアップとして、前回の記事ではソフトウェア品質技術者認定資格(JCSQE)について紹介したが、今回紹介するのがJSTQB認定テスト技術者資格(以下JSTQB)である。JSTQBという団体が日本科学技術連盟をパートナーとして実施しているが、元はISTQBという団体を中心に世界で開催されている国際的な資格だ。世界的に通用するソフトウェアテスト技術を身につけることができるため、QAエンジニア、テストエンジニアにはぜひ取得して欲しい資格である。
また、試験実施方法が2022年10月3日から、CBTに変更になったのでいつでもどこでも受験できるようになった。
詳しくは下記に記載してある。
Foundation LevelとAdvanced Level、それぞれの違い
JSTQBの資格レベルには、「Foundation Level(以下FL)」、「Advanced Level(以下AL)」、「Expert Level」に分かれている。さらに、ALはテストマネージャ、テストアナリスト、テクニカルテストアナリストの三つの資格が存在する。ただし上記のうち「Expert Level」はまだどの国でも実施されていない。また、テクニカルテストアナリストは日本ではまだ実施されておらず、準備中である。
FL、ALのそれぞれの違いを以下にまとめた。(以下に掲載しているデータは2022年10月現在のもの)
Foundation Level
試験形式 :選択式 出題数40問/試験時間60分
試験実施日:予約可能日であればいつでも受験可能
受験資格 :なし
試験料 :22,000円(税込み)
平均合格率:56%(過去32回の合格者数/受験者数から)
ソフトウェアテストに関する基礎的な知識と理解が求められる。合格率も過半数を超えており、それほど難しい資格ではない。ALを受けるためには、FLに合格していなければならないので、ALを受けるのであれば、FLを必ず受けなければならない。JCSQEと同様に、どれだけ理解すればよいかという目安が示されている。知識の認知レベルとして※「K1」から「K4」で示されており、FLの出題範囲に対する認知レベルは「K1(記憶)」、「K2(理解)」に分類されている。
※「K1」=記憶 「K2」=理解 「K3」=適用 「K4」=分析
Advanced Level<テストマネージャ>
試験形式 :選択式 出題数65問/試験時間180分
試験実施日:予約可能日であればいつでも受験可能
受験資格 :1.JSTQB認定テスト技術者資格 Foundation Level資格の合格者、JSTQB(日本)以外のFoundation Level資格の合格者
受験資格 :2.業務経験3年以上(業務経歴申請書の提出あり)
試験料 :22,000円(税込み)
平均合格率:12%(第1回を除く過去11回の合格者数/受験者数から)
第1回のみ合格率83%と極端に高くなっており、あまり参考にならないため除外した。
プロジェクトのマネジメントや計画、提案などテストマネージャとして必要な能力が求められる。出題範囲はALだけでなく、FLからも出題されるため、FLの復習は必須である。ソフトウェア開発やソフトウェアテストに関する業務経験が最低3年必要なので、注意して欲しい。ALの平均合格率はかなり低くなっており、業務経験と試験対策の両方が必要である。FLと同様に認知度の目安が示されており、「K2(理解)」、「K3(適用)」、「K4(分析)」が求められている。事例対応系の問題が多く、シラバスを暗記しただけでは解けない問題ばかりである。試験時間も3時間と長いため、かなりの集中力が必要である。
Advanced Level<テストアナリスト>
試験形式 :選択式 出題数60問/試験時間180分
試験頻度 :年1回
受験資格 :1.JSTQB認定テスト技術者資格 Foundation Level資格の合格者
受験資格 :2.業務経験3年以上(業務経歴申請書の提出あり)
試験料 :16,200円(税込み)
平均合格率:21%(過去7回の合格者数/受験者数から)
テストケースの適切な選択や実施などテストアナリストとして必要な能力が求められる。日本では試験実施が始まったばかりの資格である。合格率は、テストマネージャと同様に今後も10%前後と予想される。初級と同様に認知度の目安が示されており、「K2(理解)」、「K3(適用)」、「K4(分析)」が求められている。
無料のシラバス、有料のソフトウェアテスト教科書
photo by ソフトウェアテスト教科書 JSTQB Foundation 第4版
JSTQBはFL、ALともに出題範囲について解説するシラバスが無料で公開されている。FLはこのシラバスを読み込むだけでも合格することは可能である。ただし、説明不足なところも多いため、上記のソフトウェアテスト教科書は内容がとても充実しているため合わせて読むことをおすすめする。
一方ALは、シラバス以外にALのみの参考書というものはないため、シラバスだけで勉強するのはやや危険である。シラバスを元に自ら参考となる資料を探せるかが合否に大きく関わってくるだろう。
取得するメリット
この資格を企業、個人が取得するメリットをそれぞれ以下に説明する。
企業としてのメリット
- テストエンジニア、QAエンジニアのスキルアップにつながる
- テストに関するメンバー間の認識のズレや理解力の差が共通のものを学ぶことで緩和される
- 人事制度、資格制度とリンクさせることにより、人材育成が期待できる。
- 社外に対して、「ソフトウェアテスト技術」を有している人材がいることをアピールできる。
個人としてのメリット
- 「ソフトウェアテスト技術力」 を第三者(日本科学技術連盟)から認定される。
- ソフトウェアテスト技術を体系的に学ぶことができる。
- 外部に対して、専門知識を有していることを証明できる。
勉強方法
無料公開されているシラバスを読む
試験では基本的にシラバスから問題が出題される。学習時間や認知度が示されているので、それを元に重点的に勉強する場所を決めると良いだろう。語学力に自信があるのであれば、ISTQBで公開されている原本と合わせて読むと正しい知識を得ることができる。
テス友で学習する
「テス友」はテスト技術者の資格試験に対応した模擬試験アプリ。
JSTQB(FL)に対応、最新のシラバスと用語集に対応した問題が出題される。
テス友のメリット
・シラバス、用語集がすぐ見れること
・スマホで気軽に勉強ができること
・問題数を選択できること
・出題傾向を、ランダム、間違えた問題、章別に選択可能なこと
・直近10回分の試験結果を回答時間と共にグラフで見れること
一方で、テス友に出る問題と実際の試験問題の形式が多少異なることもある。
テス友は用語の意味は抑えられるが、試験では用語の意味を問われることもあるので、勉強方法には注意が必要。
過去に受験した方のサイトを参考にする。
JSTQBを受けた人の体験談が様々なサイトに掲載されている。どのような方法で勉強しているのか調べると参考になるだろう。特にALは定まった勉強方法がないので、合格した人の勉強方法を調べて参考にすることをおすすめする。
試験実施方法の変更
2022年10月3日から、FL試験とAL(テストマネージャ)試験が、CBT(コンピュータ・ベースト・テスティング)による試験形式に変更された。※AL(テストアナリスト)のCBT形式での試験は2023年2月開始予定。
CBT形式とは、全国各地に設置されたテストセンターでコンピュータ上で試験を行う方法のこと。
CBT化されたことにメリットはいくつかある。
従来までは紙と鉛筆を使った試験方法で受験期間が定められていたが、CBTに変更されたことで、いつでもどこでも受験可能になった。自宅受験は不可だが、47都道府県にあるテストセンターで受験することが可能。また、合格発表日も試験日から2週間以内に通知となった。
試験申し込み手順
①JSTQB認定試験申し込みWebサイトへアクセスする
https://qualification-jstqb.com/examinee/
②アカウント登録(初めて利用する方の場合)
1.入力したメールアドレスに届いたメールのURLから各種情報を入力
2.パスワードを設定する
③ログインをして、受験資格の情報を登録する
※必ず「受験資格情報」を登録する
詳しくは、ログイン後のホーム画面「試験予約までの流れ」を参照して欲しい
④試験予約をする
住所検索からテストセンターを選択し、日付を選択して予約をする
※決済方法はクレジットカードのみ
まとめ
平均合格率を見ると試験はかなり難しいが、2022年10月3日から試験方法がCBT方式になったため、予約可能な日であればいつでも受験ができるようになった。いつでも受験できるが難しいには変わりないので、計画的に勉強することが望ましい。
JSTQBを勉強することで仕事だけでは得られない知識や技術を得ることができる。試験合格を目的とするのではなく、ソフトウェアテストについて学ぶ機会と捉えて、有効活用して欲しい。
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